les impressions et les expressions

サタワル島

l'île de Satawal
tweet récrit, 28 octobre 2021

中二国語というと「星の航海術」も記憶に残っていて,サタワル語っていう言語が出てくるんですが,これが当時かじろうとしても全然ネットで情報が見つからなくて,初めて母語の壁を感じた瞬間でした。

サタワル島は戦前は日本の委任統治下だったので,探せば邦語文献もあるのかもしれませんが,戦前の記録への熱意の結実は大抵インターネットからはアクセスできない深淵にありますからね。ただ,戦前のパラオ語教本を見たことがありますが,国語文法を無理やり当てはめており,記述の妥当性には疑問がもたれたので,仮に日本語によるサタワル語の記録があったとしても,あまり期待できないかもしれません。

そんなサタワル語なんですが,高三のとき勉強をさぼってGoogle Scholarサーフィンをしていたら,英語で書いてある博論で,文法が素描されているのを見つけたのです。それを一通り読んで,合ってるかはわかんないけど一応作文することに成功しました。そんなわけでサタワル語は母語の壁を克服した記念でもあります。

普段さんざん英語のことを悪く言っていますが,なんだかんだいって英語から広がる世界ってやっぱりありますし,その点リングア・フランカとしての英語もなかなかわくわくさせてくれる面はあるもんだなって。この感覚を忘れずにやっていきたいものです,英語を餌にした商業主義に飲まれることなく。

Igine i giuneei kepas e, i mwittik nge i a giuneei kepas aepesarh-n soaro nge i pwe sa mwen aerakeraek pwuuk kofan lepas e nga i pwe soapw mwen staetii.
この言語を知ったときには,私はまだ若くて,外国語を少ししか知らず,この言語についての本を読めなくて,学ぶことができなかった。

— なんこう (@notolitos) August 21, 2020

「星の航海術」は,南洋のサタワル島に受け継がれている星空を使った伝統航法で,これ自体もなかなか素敵だったりします。星を覚える数え歌みたいなやつもあるんでしたっけ。

オーストロネシア語族の分布はほんとうに広くて,(大航海時代以前では)印欧を凌ぐ最大の語族なんて言われることもありますが。もともとは台湾にいたのに,マダガスカルからイースター島まで広がっているんですよね。今ではサタワル島を除いては伝統航法は廃れてしまったようですが,かつてこれだけの広範囲を,星空を管制塔として結んだネットワークがあったんだなあって憧れます。

そんなわけでサタワル語と伝統航法はちょっとした特別な思いを持っていたんですが,先日,ツイッターで存在を知って以来念願だったみんぱくにいったところ,展示室に足を踏み入れてすぐ,眼前に大々的な伝統航法の展示があって,惹かれる対象同士の交錯にかなり嬉しさを覚えました。

館内にはサタワル語の音声が聞けるところもあったりして,国立の博物館にサタワル島とサタワル語の展示があったんだなあって感慨深く,伏線回収って感じで大変愉快な思いをしました。みなさんもみんぱくに行きましょう。

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