les impressions et les expressions

中国語の動詞句について

sur les locutions verbales du chinois
originel, 26 mars 2023

中国語の動詞ってわけがわからないんですよね。アスペクト助詞のとか語気助詞のとか補語とかあれやこれや動詞に付く要素が出てきて,それがoptionalだったらいいんですけど,つけないとしばしば「終止感」とかいうなぞの標語のもとに非文判定されます。(※個人の感想です)

というわけで,きょうはそんな中国語の動詞句について所感を書いていきます。なお,ここで書くのは所感なので,すなわち感じたところです。べつに裏は取っていません。なんなら中国語は母語でなければ上級者でもないしなんなら大学の単位も一単位も持っていません。ということで二条河原の落書よりも信頼性には掛けるのですが,それでも作文の必要に迫られる際は(正しいかどうかは別として)なんらかの内的な基準に従って動詞句を決定しているわけですので,それを言語化してみようという自己表現の取り組みとしてこの記事を書きます。

さて,いきなり結論を書くと,focusがあたっているVPはrealisかirrealisかを義務的に標示するのではないかと思っています。

一般にN VPのような単純な文ではVPに焦点があたります。従って,そのVPはrealisかirrealisかを標示しなければなりません。一方二つ以上のVPが連なる文では,より前のほうの情報ほど発話の前提とされ,後の情報ほどfocusがあたりやすくなると考えられるので,より前のほうのVPではrealisかirrealisかを標示する必要がありません(これが「終止感」というやつの正体だと考えています)。

adjunctは,敢えてそれを言い表しているあたりに,発話者がその情報を発話のなかで重要なものと見なしていると言えそうです。従って,adjunctのある文では,その主要部となるより小さいVPにはfocusが当たっていないこともあり得ます。ただし,そもそもcomplementとadjunctの区別がむずかしいケースもありうるため,発話の状況を考える余地は一定程度必要となりそうです。

complementとして補文をもつVは,focusが補文の中にあるため,realisかirrealisかを標示する必要がありません。

」を用いた構文では,通常Vのあとに来るはずの動作の客体が前へと移動しているため,VPの中でも特にV自体が新たな情報として文のfocusになります。従ってrealisかirrealisかを標示する必要があります。(より細かくいえば,はirrealisなことには使えず,補語を伴うという制約があります。)

VPがrealisであることを表す最も無標な形は語気助詞ので,逆に言えば,しばしば「実現」と称されているものがrealisというmoodなのではないかと考えます。語気とはすなわちモダリティであるため,語気助詞である「」の機能をmoodとすることは,従来の「」の品詞分析を支持します。否定の場合は,一般に説明される通り,「」がこれに代わります。

VPがrealisであることを示すその他の方法として,complementをなるべく具体的にするという方法があります。complementが固有名詞である場合,すでにその要件を満たしています。そうでない場合は,量詞を伴うことで最も無標にその目的を果たすことができ,その際には数の標示が義務的になります。しばしば言われている通り,動詞の重ね型は数量補語に由来するため,補部の数量を明示するこの方法に準じるものです。

逆に,VPがirrealisであることを示すには,「」「」などの助動詞を用います。

アスペクト助詞の「」はrealisもirrealisも表しません。このことは,これが従属節にも多用されることや,またfocusedでrealisのVPで用いられるときには,complementたる賓語が固有名詞であるか,量詞を伴うか,語気助詞の「」を用いなければならないことによって支持されます。

一般にfocusのあたる情報は詳述されると言えそうです。中国語でも,動詞に可能補語や結果補語,方向補語を付け,意味が詳しく述べられているものは,そのVにfocusがあり,realisであることが標示されている可能性が高いといえそうです。ただしこれらの方法は,realisであることを表すのが本義とは言えず,ただ標示されやすいだけの,傾向の話です。従って助動詞とともにirrealisで用いられることもあります。助動詞がなく,語気助詞の「」もなかった場合が文として適格なのか,その場合どんなモダリティになるのかはよくわかりません。

同じくよくわからない文に「是……的」構文があります。「是……的」構文は「」の前をfocusにする,分裂文に似た構文です。しかし,この構文はVを詳述すればするほど許容度が上がるとされており,少し不思議です。

要……了」は,上の考えに競合する重大な例です。上記の考えによれば,irrealisを表す「」とrealisを表す語気助詞の「」は共起しないはずだからです。将然はirrealisとrealisの中間的なものだから……などという逃げも可能ですが,もうすこし考えてみたいところです。

以上です。やっぱり具体的な中国語の文に自信がないのでずいぶんと抽象的な記事になってしまいました。いくつか文例を用意して,こんどネイティブのひとに訊いてみたいですね。生成文法についてももう少し勉強して,改めてこの記事を推敲してみるのも良さそうです。繰り返しになりますが,この記事は中国語の面からしても言語学の面からしても全く素人の気持ちでしかないので,くれぐれも参考にはなさらないでください。もしお詳しいかたでこの記事をご覧のかたがいらしたら,コメントをいただけると嬉しいです。それではまた。

(以下4月27日追記)前に「……,你可以吃」と言ったら「你可以吃一吃」だと直されました。この訂正は上の考察に該当しなくて,むずかしいなあとなっています。ここでは「可以」は(おそらく)「能」には置き換えられないので,助動詞部分が二音節となると,本動詞が一音節であることはゆるされないのかもしれません。

さて,唐さん(@parlejaponais)が前についーとしていらした中国語の句構造規則(ソース)を読んでみようっていう気持ちになりました。

VP → {(AdvP),(PP)} V(-de) (NP/AP) {(NP/S),(ClPFre/Due)}
― ClPFre → Num Cl动量词
― CIPDur → Num Cl (N时间

上記の記述によると,補文(S)と頻度や継続時間を示す補語は共起せず,また目的語を二つ取る動詞の場合は補語をつけることができないそうです。

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